訪問介護(ホームヘルプ)
訪問介護とは、通称ホームヘルプサービスと呼ばれ、介護サービスで最も事業体として多いサービスのひとつです。平成22年6月(厚労省統計)でも要介護者は全国で約480万人と年々増え続けており事業者、介護員の数が不足しているのが現状です。つまり、地域にもよりますが新規参入しやすい市場といえます。
この訪問介護は、大きく次の2つに分かれます。
『指定訪問介護』 | 要介護者が自宅にて入浴、排泄、食事等の介護を受けるサービス |
『介護予防訪問介護』 | 要支援者が自宅にて介護状態の軽減又は悪化の防止のために受けるサービス |
要介護者、要支援者とは、介護にかかる手間をランク付けしたものです。
要介護度の軽度の順から言うと、要支援1、要支援2、要介護1~5というように7段階に区分されます。
介護報酬は提供したサービスの時間数と時間帯及び内容によって決められています。
介護予防訪問介護報酬は週単位の訪問回数によって月単位の定額報酬となっています。
また、指定訪問介護は、身体介護(入浴、排泄、食事など)と生活援助(買物、掃除、洗濯など)に分けられ、1時間あたりの介護報酬にも差が付けられています。
訪問介護には、このほか『通院等乗降介助』を行うことでの介護報酬があります。この乗降介助とは、通院等に際して、ヘルパーが運転する自動車への移動・移乗の介助を行うことをいいます。
※通院等乗降介助サービスを提供する場合は、一般乗用旅客自動車運送事業(福祉タクシー)又は特定旅客自動車運送事業の許可を運輸局から受けておかなければ介護報酬として算定できません。
訪問介護事業を開始するためには、事業所の所在地となる都道府県に「介護事業者指定申請」を行い、指定介護事業者として許可を受ける必要があります。
訪問介護起業必勝法
介護ビジネスは、大きく分けて施設系と居宅系の2つの選択肢があり、開設資本が少額(例)借入金も含めて500万円以下)の場合は迷わず居宅系を選ぶ方が良いと言えます。
施設系開設には建物、設備が必要であり、多額の初期投資が必要となります。また、施設系(ハコモノ)は利用定員に上限があり最高利益がほぼ確定しています。
それに比べ、居宅系の代表格である訪問介護事業は自宅開業などで初期投資を最小限に押え小資本でスタートでき、定員の上限もなく利益は青天井であるといえます。
ただし、事業所の開設場所は経費節減だけを求めて自宅を選択することのないようにご注意下さい。立地条件の中で1番目に検討するべきは、介護ヘルパーが通いやすいかどうかです。
勤務してくれる介護ヘルパーは主に近所の主婦層が多いのも一般的です。介護ヘルパーの離職率を抑えるためにも事業所が通勤に時間のかからない近所にあることが求められます。
以上のことからも、開設資本が少額の場合は、居宅系事業で事務所開設を住宅地区としてスモールビジネスで展開すると比較的早く経営も安定する可能性があります。
現に、住宅地区密着型でスタートした事業所は初年度から黒字で、次々と拠点を増やす攻めの経営を展開し、増収増益を続けています。
訪問介護事業のサービス提供の流れ
ここで、訪問介護事業所として実際にサービス提供するまでの流れをつかんでおきましょう。
1.利用者からケアマネージャーに相談・申込み
介護保険の認定を受けている利用者がケアマネージャー(居宅介護支援事業者)に相談・申込みを行います。
2.ケアマネージャーが利用者宅に訪問
ケアマネージャー(居宅介護支援事業者)が利用者の希望・状況を把握するため、利用者宅に訪問します。
3.ケアプランの作成
ケアプランは本人や家族が作成することも可能ですが、ケアマネージャーに依頼するのが一般的。
通常は依頼されたケアマネージャーがサービス内容と提供事業者を提案して本人・家族等で最終検討を行います。
ケアプラン作成については利用者の自己負担分がなく、全額介護保険から支給されます。
4.サービス提供契約の締結
ケアプランをもとに訪問介護事業所が利用者宅を訪問し、重要事項説明書による説明と同意により、サービス提供契約の締結をします。
5.訪問介護サービス提供の開始
介護ヘルパーが利用者宅を訪問し、ケアプランに沿ったサービスを提供していきます。
介護事業で失敗しないための重要ポイント
ポイント① 従業員と利用者の確保
通常のビジネスと同じですが、事業所としてはとにかく利用者の確保ができないと話になりません。
サービス提供の流れにも記載していますが、その利用者の確保には、ケアプラン作成者であるケアマネージャーに自分の事業所の存在を認識してもらわないと利用者への紹介をしてもらえません。
ただ、ケアマネージャーとの連携だけで事業が安定するわけではなく、利用者に継続利用してもらってこそ本当の安定が生まれます。
それには、利用者に直接に接する介護員(ヘルパー)が優秀である必要があります。ヘルパーが利用者と上手に接することができなければ、やはり利用者も離れていきます。
つまり、多くのケアマネージャーとの連携と優秀な介護ヘルパーの採用に最大限配慮することでビジネスとして安定する業種であると言えます。
ポイント② 介護サービスを行う地域をどこにするか
ポイント①の従業員と利用者の確保と同格に重要なのがサービス提供を行うエリアをどこにするかという点です。
よく開業資金を節約のために自宅開業されるビジネスプランをお伺いしますが、資金節約のためだけに立地条件を無視して開業することは絶対にさけるべきです。
そもそも開業の本質は、介護事業を軌道に乗せて継続運営することにあるはずです。
立地条件として、「利用者が多い」「競合が少ない」「ヘルパーが通勤しやすい」「比較的富裕層の地域である」などが挙げられます。
資金的条件に配慮しながらも、できるだけ好条件の地域を選択することが後悔しない開業方法です。
自宅開業をご検討の場合は、開業要件がほぼ不可能に近い条件の都道府県もありますので注意が必要です。迷った時は、お気軽に当事務所へご相談ください。
ポイント③ どの種類の会社組織を選ぶか
会社組織の種類を選択する際は、その組織体のメリット、デメリットを熟慮した上で慎重に決定することが必要です。
後から組織変更を行うことも可能ですが、手続き的にも、事業運営上も大変な手間がかかります。
断定はできませんが、一般的に選択されることが多いのが株式会社です。一番の理由は認知度が非常に高いことが挙げられます。
その他に、合同会社やNPO法人などがありますが、利用者の方々がどのような組織かを一瞬で理解するのは難しい場合もあります。
名刺交換の際に、合同会社やNPO法人とは何ですかと質問されることを想像してみてください。
簡単に各会社の比較表を記載致しますので、参考にしてみてください。
組織名 | 役員 | 手続き費用 | 設立日数 | 信用度 | 可能な事業内容 |
---|---|---|---|---|---|
株式会社 | 取締役1名でも可 | 242,000円+資本金 | 約1ヶ月以内 | ”高” | 公序良俗に反しない限り何でも可 |
合同会社 | 社員1名でも可 | 100,000円+資本金 | 約2週間前後 | 新しい組織体なので”中” | 公序良俗に反しない限り何でも可 |
NPO法人 | 理事3名、監事1名必要 | 0円でよい 資本金も不要 | 約4ヶ月 | ”最高” | 都道府県等から認証が下りれば可 |
上記「手続き費用」には、行政書士の代行費用は含まれておりません。
NPO法人では上記の他にも役員資格、報酬制限などいろいろな制約がありますのでご注意ください。当事務所では、介護事業申請だけでなく会社設立手続きも受け賜わりますので、お気軽にご相談ください。
ポイント④ 開業資金に余裕を持たせる
介護事業の特徴の1つとして、サービス提供しても利用料の即日入金はされないことにあります。
通常、利用料の入金は2ヶ月遅れでなされます。しかし、その間の人件費、販促費、地代家賃等の経費の支払は待ってはくれません。
つまり、開業時の数ヶ月間は赤字経営を覚悟しておかなければならない事業だと言えます。
ただ、安心なのは、支払者が市区町村であり、取引上未払いとなることが無いのが最大の強みでもあります。
このことからも、開業後数カ月分の運転資金も含めて、自己資金で十分に賄える場合はよいですが、金利の低い公的融資を利用するなどして現金確保は必ず行っておいた方がよいでしょう。
黒字倒産に陥らないためにも十分に現金預金の準備をご検討されることをお勧めします。
当事務所では、公的融資支援も行っておりますのでお気軽にご相談ください。